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神奈川・不明/その他

ウィスキー15年もの

19/11/4 21:04
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彼女はその日いつものように子ども達に挨拶をした。
そして出かける前に部屋をきっちりと掃除してゴミを出し、カーテンを閉めて電車に乗り待ち合わせ場所へと急いだ。
彼女の前には15年もののウィスキーと小さな皿に乗った料理がいくつか運ばれてきた。
朝から何も食べていなかった彼女の体にはウィスキーが沁み渡ったが料理を食べる隙もなく会話の渦に飲まれた。
彼女は酷くなる動悸を隠しながら、会話が途切れないように笑顔をふりまき気を配った。
ボトルをほぼ空にした頃、千鳥足ですっかり暗くなった空の下を駅に向かって歩く。
バッグから赤い口紅を出し、背筋を伸ばして歩きながら塗った。
踏切の音が酷い吐き気と頭痛を増幅させる。
周りに人はいない。
何かに引き寄せられるかのように遮断機をくぐり、バッグを肩から降ろし、彼女は無表情で冷たい空気の中に鈍い音をたてて散った。
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